落ち穂ひろいmini★churra

churra = pene

 いつもお世話になっている俗語辞典 Julia Sanmartín Sáez; “diccionario de argot” (Espasa Calpe) には churra ではなくて churro となっています。

churro m. Pene. Dado el parecido formal entre el churro ‘comestible cilíndrico’ y el pene se crea este sentido figurado.

 今回の用例を確認してみましょう。

– Pero ¿cómo que una foto? ¿Para qué te fotografías la churra?
– ¿Puedes no llamarlo así?
– ¡Que me contestes!
(…)
– Tu padre ha pillado a tu hermano fotografiándose el canelón.
– ¡Jon! ¿De la churra?
– ¿Podéis no llamarlo así?
– Lo llamamos como podemos. ¿Por qué estabas haciendo eso?
– Me lo ha pedido ella.
– Ella, ¿quién?
– Ya está, déjalo. Ayúdame, por favor.
– ¿Estas cosas ahora se piden?
– Si se lo ha pedido ella…
– A ver, pero ¿quién es ella?
– (SUSPIRA) Luna.

“4 ESTRELLAS” T1-E072 (6:45)


 上の場面では churra だけでなく、canelón も登場ですね。この単語も上記俗語辞典には収録されていないのです。María Moliner でも確認しましたが、pene の同意語として挙げられている語は次のとおりで churra は載っていません。

Carajo, chorra, cipote, cola, minga, nabo, órgano, paquete, picha, pijo, pilila, pinga, pito, polla, rabo, verga

 最後の切り札(?)として書棚から取り出したのが、『俗語で覚える入門スペイン語会話』です。1986年発行の新書ですので、今となっては入手困難でしょうから、関係個所を引いておきます。

 さて polla の同義語をあげて見よう。
 bolo (棒、能なし。TOLEDO の県民に bolo なんていうと非常に怒るので注意。 Insultoを込めたおのぼり、おばかさんの意味)、banana (バナナ)、 brecha (いちじく)、cimbel (おとり綱)、cipote (ばかな)、cola (尾)、colgajo (ぶらさがったボロ)、cosa (物)、chorizo (豚の腸詰め)、chorra (オチンチン)、churro (揚げ菓子)、mazo (大槌)、minina (pene pequeña)、nabo (かぶ・大根)、pájaro (鳥)、partes (pene más testículos)、pera (なし)、pene (ペニス)、pepino (キュウリ)、pichilina, pilila, picha, pijo, pito (笛)、platano (バナナ)、puro (葉まき)、porra (棍棒)、rábano (大根)、rabo (尾)等、数限りないが、棒に似たものはすべてpeneになるわけで、これは世界共通のようだ。熟語として、Salir de la polla (~したいからする)がある。

―『俗語で覚える入門スペイン語会話』(榎本和以智:南雲堂新書スペシャル、1986) 79-80頁


 以上のことから、churra, canelón が今回の意味で使われるのは比較的新しいのではないかと想像されます。というのも、このスペインドラマに限らず、繰り返される単語、ゆっくりめに発話される単語、あるいは引用符付きで字幕に登場する単語は「要注意!」というシグナルになるからです。このドラマを「Z世代」ドラマと思ってしまう理由の一つは、視聴者にこのような語や用法を学ばせる意図が窺えるからです。だからこそ、私のようなスペイン語学習者にとっては、ストーリーそのものの陳腐さを抜きにして語学教材として魅かれる理由になっています。また、スペインドラマ ”Cuéntame Cómo Pasó” には出会えなかった表現を少しずつ拾っていくことは私にとって愉快な「落ち穂ひろい」になっています。

 ところで、2024年1月30日の小欄 落ち穂ひろいmini★ patata で紹介できなかった pito の用例を見つけましたので、忘れないうちにご紹介します。

pito
– Anda, siéntate ahí. A ver, explícame a mí qué te hace el logopeda ese. Porque ni hablas más ni haces nada nuevo. Igual es que tienes un trauma infantil. Te pasó alguna cosa de pequeño y se te ha quedado atascado en esa cabecita tuya. Di. Sí, alguna cosa traumática. Viste a tu padre en bolas. O te tiraron a la piscina y no sabías nadar. O peor todavía: te enteraste muy pronto de que las niñas no tienen pito. ¿Es eso? Bueno. Por lo menos sonríe el niño.

– “ifamily” E01 (07/03/2017) (27:46)


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