繪処アラン・ウェスト
ブラジルから来日中のとあるメーカーの社長さんのアテンド中ですが、急遽急ぎの業務が入ったため昼食後の旅程を繰り上げてホテルに戻りたいということで本日のFITは終了。
そこで、私は、ランチ後に散策予定だったアメ横を念のため下見することにしました。ついでに谷根千も久しぶりに歩こうと千駄木駅まで移動して谷中から上野への「ともさんぽ」を始めました。コロナ前の活気がない谷中銀座、平日のせいかもしれないのですが、魅力が薄れてしまったような気がしました。お気に入りだった店前の猫の像が見えなかったのが残念。閉まったお店も目につきましたし、改装中の建物も多かったです。
気を取り直して所属するガイド団体で学んだ散策コースを逆走する形でのんびりと歩いたのですが、途中で真島坂を確認しておこうと寄り道をしました。以前、我が家のルーツ探しをテーマにしたときにも触れました。ご先祖様と私を結びつける唯一の具体物が東京に存在することは了解していたのですが、これまでその近くまで行きながら実際に見ていなかったものですから、立ち寄ったのです。何の変哲もない下町の坂道。この坂沿いに屋敷を構えていたことから坂の名前として残ったそうですが、ただそれだけのことですべては跡形もなく消え去っています。とはいえ、こんなつまらないことにでも感激する年齢になったのかなと思いながら上野方面に足を進めました。
それからヒマラヤ杉の「みかどパン店」。なんと昨年10月10日に閉店との張り紙があるではないですか!。そしてその張り紙には感謝の気持ちを記したお店へのメッセージもあり、心温まる思いをしました。
このお店のすぐ隣にアラン・ウェスト氏のアトリエがあるのですが、これまでに何度も通りながら、いつ営業しているのだろうと思ってしまうほどお休みだったために訪ねたことは皆無でした。この日本画家のことは上記ガイド団体の研修会で教えていただいたはずですが、どなたからだったか覚えていません。それでも、同氏のエッセイは英文雑誌(広報誌?)で何度か拝読していたこともあり、以前から気になる芸術家のお一人だったのです。
OPENのサインに引かれるように中に入ろうとしたところでお声をかけていただき、びっくり。そのうえ雑誌の容貌とはかなり異なる(ずっと若々しく見える)お姿に二度ビックリです。しばらく立ったままお話を伺っていたのですが、上から目線では失礼と感じて私も着座させていただいて談笑を続けました。気がつくと二人だけで40分もおしゃべりをしていたものですから恐縮しながら辞去させていただいたのです。
日本人以上に日本的な立ち居振る舞いの同氏にはとても魅せられるものがありましたよ。最後の最後に氏のスナップ写真を撮らせてくださいとは言いにくかったものですから、アトリエ外観を撮影させていただきました。
さらに上野方面へ。その途中の SCAI THE BATHHOUSE もオープンしているではないですか! これも偶然だったのですが、本日より10月15日までの会期で李禹煥さんの個展「物質の肌合い」が開催されているのです。受付の女性によると国立新美術館の開館15周年記念に合わせて開催中の回顧展に出品できなかった作品を本画廊で紹介することになったとのことでした。直島の美術館よりも出品数が多い?と思いながら久しぶりに同氏の作品を身近に鑑賞することができたのは幸運です。
と同時に、ここで反省点が一つ。アラン・ウェスト氏との談笑中に公衆浴場(銭湯の事です、念のため)を改装したアトリエなんて素敵ですね!という私の発言に対して氏は、ここは元はガラージ(先生は日本語のガレージを英語風に、こう発音なさっていました)だったんですよと、さりげなく流してくださったのです。私の誤りを咎めるでもなく、何事もなかったかのように訂正してくださったのです。その誤りをSCAIに入るまで気がつかなったのですから、毎度のこととはいえ、我が身のオオボケには呆れてしまうというオチまであります。アラン・ウェスト氏には、この場をお借りしてお詫び申し上げます。失礼いたしました。こんな日常の一コマも、いつか微笑ましい思い出になるだろうと思いますので恥ずかしながら記録させていただきました。以上です。