窮すれば農民のまねをせよ。商人のまねはするな。
この一節、大佛次郎さんの『天皇の世紀』でも全く同じ発想の記述があったと思うのですが、自分の妻に店をやらせていた事実を維新後に隠さねばならないほど武士にとっては体裁の悪いことだったようです。ドラマ化された同作品でもそのことに触れるシーンがあったはずですが、誰だったかすぐに思い出せません。聞けばどなたでもご存知の志士だったのですが。
ということで、次の一節を備忘のために記録させていだきます。
さて、むだ口である。
-司馬遼太郎 『街道をゆく 33 奥州白河・会津のみち』(朝日新聞社 1989年11月30日 第一刷発行 221-222頁)
江戸封建制が、コメを物質的価値の基礎にすることによって成立したことはいうまでもない。全国三千万石というコメ収穫の二割ほどを徳川家がとり、同時に政府(幕府)運営費とした。
あとを、二百数十の大名群にわけた。大名の力も権威も、その領地でどれほどコメがとれるかできめられた。侍どもの尊卑も、同様である。石高というコメの大小が基準だった。その価値の源泉は、水田農民がつくる。
「民百姓の労苦を思い遊ばすように」
といって、どの大名も、少年時代、耳にタコができるほどきかされて育つ。大名たちは、深層の部分では農民と運命共同体のつもりでいた。げんに、かれらの祖は、鎌倉・室町の農民から出た。
諸藩の侍もそうで、
「窮すれば農民のまねをせよ。商人のまねはするな」
といって育てられた。屋敷内に畑をつくることはしても、商いはするな、ということである。
これに関連して、今年1月に始まった “Cuéntame cómo pasó” 第22シーズンを視聴中に耳にした言葉があります。「農民のまねをせよ」の発想に通じるものがあることから、当該部分も併せて記録させていただきます。「額に汗して自分の手で稼げ」にぴったりの台詞が同章に二度も出てきました。誤解を恐れず書いてしまうと、些かスペイン人らしからぬ発想?でもあります。
-Somoza. No sé si te he contado que… que me voy a casar con la Seca.
-No le arriendo la ganancia.
-Te quería preguntar a ver si me puedes adelantar un par de… Un adelanto de la uva, que para casarse hacen falta cuartos.
-Se cobra cuando acaba la vendimia, Parriba. Antes no sé cuánto darte.
-Es que no tengo ni para zapatos.
-Pues te casas en alpargatas. Cada uno tiene lo que suda, y ese dinero no lo has sudado. No es tuyo todavía. Siguiente. Nombre.
– “Cuéntame cómo pasó” Capítulo 391 (T22-E03): Ratones (10/02/2022)
-Me llamo Onofre Ortega. Tengo bodegas en La Rioja y en Yecla. Me quedé sin uva por la gota fría y este señor me ofreció 1.500 toneladas para cubrir mi producción. Me las quería cobrar a 90 pesetas.
-¿Le habías vendido nuestra uva antes de comprárnosla?
-Señores, necesito uva y la pago a 60 pesetas. Un precio justo.
-Teníamos un trato.
-Sí. Y te aseguro que todo el mundo de aquí a La Rioja va a saber la clase de tratos que ofreces.
-Me has hecho perder mucho dinero.
-Lo sé.
-Esta no te la perdono.
-Bueno. Justicia divina, Somoza. Y una cosa que me dijiste una vez que tenías razón: cada uno tiene lo sudado, Somoza. Bueno, pues eso no lo has sudado tú, lo han sudado estos y yo.
-Esto no lo pienso olvidar.
-Ya lo sé.
-Arrieros somos y en el camino nos encontraremos.
-Adiós.
-¿Me entiendes?
-Adiós, hombre.
– “Cuéntame cómo pasó” Capítulo 391 (T22-E03): Ratones (10/02/2022)
最初の引用が同章冒頭のAntonio の回想シーンでMercedes と結婚(設定としては1947年か48年?)直前の Somoza との会話。次のシーンが今シーズンの舞台となっている1993年で、同じく Somoza との会話です。45年ほども前に言われた台詞をそのまま返すAntonio のこのスペイン人らしからぬ?含蓄ある言葉に反応していました。
状況はどうであれ、ひとつの戒めの言葉として、もうすぐ17歳になる息子へのはなむけの一言にしたいと思います。ちょっと、はやいけど、誕生日おめでとう。