VoiceTra「おなかがすきましたね」
VoiceTraという音声翻訳アプリをご存じでしょうか。私はつい最近になるまで知らなかったのですが、英語通訳Hさんから観光庁からこんなアプリが出ていると教えて頂きました。詳細は、公式HP 多言語音声翻訳アプリ<ボイストラ>で検索可能です。
7月1日からコロナウィルスワクチン接種関連の業務を担当させていただいているのですが、日本語も英語もできない接種者も少なくありません。
11月8日、ベトナム人女性三人組が接種会場に来場。日本語も英語も通じず、ベトナム語を使えるスタッフもいなかったことから VoiceTra に頼ることにしました。これまでに何度か別の言語で利用したことがあったので、今回もなんとかなると思ったのですが、操作を間違えてしまったのか、「おながすきましたね」と会場内に鳴り響いたものですから、大爆笑。
かなり慌ててしまったのですが、言語によってはまだ開発途上なのかなと思い、昨日、ベトナム語で案内している女性に確認させていただきました。簡単な日本語なら伝わるのですが、少し長くなると音声認識がうまくできず、それが誤訳の原因になっているようです。日本語には同音異義語が多いことから、今のAIはそれぞれの状況判断がうまくできていないということになりそうですね。
上のHPで知ったことなのですが、このアプリは観光庁の肝煎りと聞いていたのは誤り(ひょっとしたら同音異義語「官公庁」という意味だった?! 日本語は難しい!)で、「情報通信研究機構(NICT)の研究成果である音声認識、翻訳、音声合成技術を活用」とのことです。機械翻訳はかなり進歩しているとはいえ、まだまだ人力が必要な場面はなくならないようですね。
これで思い出されるのが、一昨年11月のスペイン人団体ツアーでの出来事です。神社散策中に女性が一人気を失って倒れました。しばらく社務所で休ませていただいたのですが、ご家族から救急車の要請がありました。幸い救急隊員の中に日常会話のできる方がいたことから、グループを離れずに済みました。搬送先の病院に着いたところでご連絡いただけるようにお願いをして、他のお客様(私たちは「ゲスト」と呼ぶようにTLさんより求めれます)を次の訪問先にご案内すると同時に、バスドライバーに観光後の東京への帰り道に搬送先病院への立ち寄りについて交渉しました。案の定、予め決められた行程外の運行は認められていないという返事でした。
そうこうしていると搬送先病院のドクターから連絡があり、ポケトークでは細かなところの説明がうまくできないので来院してほしいとのことです。ここから病院までタクシーを使ってもバス駐車場に戻るのにどれだけ時間がかかるかわからないことをドライバーに伝え、その旨をバス会社にも伝えてほしいとお願いし、同時に私の方は逐次状況報告をしていたエージェント様にも行程変更について再度の依頼をしていただきました。
最終的には他のお客様ともにバスは病院内の駐車場に乗りつけることができ、車内でお待ちいただき、私は院内の診察室で心電図等の結果と医師による診断をご本人とご家族にお伝えしました。
以上は日光での出来事です。最終訪問地が東照宮宝物館でしたが、館長のご厚意(せっかく遠くからお越しいただいたのですからというお言葉をいただきました)で最終入館時刻に遅れたにもかかわらず、入館を許可していただいただけでなく、閉館時刻が過ぎたにもかかわらず全て済むまで館内でくつろがせていただきました。
あれから2年になりますが、このポケトークは先日のVoiceTra 絡みの珍事との関連がありそうです。今回初めて知ったのですが、ポケトークもNICTのデータを活用しているサービスの一つなんだそうです。だからでしょうか、今なお改良の余地があるということが納得できますね。
私たち通訳ガイドは機械ができない「おもてなし」をできるように日々研鑽を続けなれば、近い将来、さらに出番が少なくなっていくことになりますね。