落ち穂ひろいmini dyspnea
difficulty in breathing 「呼吸困難」
突然ですが、新型コロナのワクチン接種はお済みですか?私はあるエージェント様の職域接種会場で2回の接種を終えていますが、昨日、都内の大規模接種会場での通訳業務がありました。
ちょうど若年層対象の1回目接種会場だったのですが、20代後半のカナダ人男性が接種による副反応で失神しました。
どの程度の頻度で発生するのか知らないのですが、私にとっては二度目の経験です。診察室で休んでいた彼の容体が落ち着いたところで診察が始まりました。今回は男性ということで、ドクターの診察の様子を直に見ることになりました。
医師が彼に「呼吸困難」という意味で dyspnea の有無を英語で確認なさっていましたが、その意味が理解できていないようでしたので、私の方から difficulty in breathing だと補足説明をしました (スペイン語 disnea = dificultad respiratoria o falta de aire)。
医師の質問内容は、アナフィラキシーショックによる症状があるか否かのようでした。昨日の接種会場では受付時に「COVID-19ワクチンモデルナ筋注の接種を受ける方へ」というパンフレットが接種者全員に配付されています。そのパンフに接種直後すぐにあらわれるかもしれない副反応として、「ショック、アナフィラキシー」と「血管迷走神経反射」の主な症状が箇条書きで記載されています。
ドクターはそれらの症状がないかどうかの問診後に触診、バイタルチェックをして診察を終えました。「血管迷走神経反射」と診断されたのですが、彼の場合は接種直後の失神だったことから、アナフィラキシーの疑いがあったのだろうと想像していたのですが、大事に至らずほっとしました。それを Vagal reflex だと彼に伝えたところ、ドクターが、正確には Vasovagal reflex と言いますよ、と教えてくださいました(Overview of the Vasovagal Reflex)。
ところで、「血管迷走神経反射」って何? 実は、この業務をお引き受けするまで日本語でさえ聞いたことがありませんでしたので、英語やスペイン語で何と言うか知るはずもありません。
上記パンフには、「ワクチン接種に対する緊張や痛みなどをきっかけに誰でもおこりうる体の反応で、以下のような症状があらわれます。通常、横になって休めば自然に回復します。
●たちくらみ
●血の気がひく(時には気を失うこともある)」
との説明があります。
また、厚生労働省HPの「新型コロナワクチンQ&A」には次のような詳細な説明がありますので、ご参考までに引用させていただきます。
Q.接種後の「失神」や、その原因ともいわれる「血管迷走神経反射」とは何ですか。
A.血管迷走神経反射は、緊張やストレスなどで起きる、血圧の低下、脈拍の減少などのことです。「失神」とは、意識を一時的に失うことをいいます。失神とは、一時的に脳への血流が減少することで意識を失うことを指します。その原因として最も多いのが血管迷走神経反射によるものです。血管迷走神経反射では、様々な原因によって、副交感神経が活発になり、血圧の低下、脈拍の減少などが生じます。睡眠不足や疲れている時、長時間立っている時、痛みや緊張などの精神的ストレスを感じた時などに、血管迷走神経反射は起こりやすくなります。失神する前に、通常、頭がふらふらしたり、吐き気、発汗などの症状を伴います。血管迷走神経反射自体は、横になって休むことなどで治るので、特に健康上大きな問題になることはありませんが、転倒により怪我をしてしまわないよう注意が必要です。
緊張や痛みなどのストレスによって、血管迷走神経反射は、新型コロナワクチンに限らず、ワクチン接種時や血液検査の際に生じることがあります。ワクチン接種前には、十分な睡眠をとり、接種後15分は椅子に座る、体調が優れない場合は体を横たえるなどの予防が重要です。
また、ワクチン接種や採血の時に、血管迷走神経反射が起こり、気分が悪くなったり失神等を起こしたことがある方は、予診の際にその事を伝え、横たわって接種を受けたり、接種後は30分程度様子を見るなどの対策を取りましょう。(参考資料)
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0073.html
血管迷走神経反射について(第21回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料より抜粋)
CDC. Fainting (Syncope) after Vaccination
最終的には、ご本人の希望とドクターの判断でそのまま隣県のご自宅までひとりでお帰りいただくことになりましたので、無料シャトルバス乗り場まで同行しました。その時に彼が dyspnea という言葉は今まで聞いたことがなかったとおっしゃいました。カナダの30才前の男性(個人情報ですので、実際の年齢は伏せておきますね)からの一言でしたので、私たち日本人が知らないのは当り前かなと思いましたし、非英語圏の方への使用は避けようと思いました。
上記の「血管迷走神経反射」がその良い一例ですが、私たちも病院などでの受診時に専門用語を聞いてもさっぱりわからないことがありえますよね。英英辞典(西西辞典でも)で定義(語義説明)を確認すれば、日常の言葉に言い換えは可能なのですから、辞書に出ている医学用語は避けるように心がけなければと思いました。
こんな経験も、そうあることではない(あってはいけないのですが)ので、記録させていただきます。
【関連記事】
落ち穂ひろいmini vestir
〔2021年9月27日 追記〕記事 Time to roll up your sleeve and bite the bullet.