落ち穂ひろいmini cacha
ponerse cachas
『クラウン西和辞典』(三省堂)は cacha には「《話》 尻 (= nalga)」という意味があると教えてくれます。でも、次の会話では異なる部位を指していることが容易にわかりますね。”Si te pones tetas” という失言に続く “te pones cachas” は次に続くpectorales de gimnasioからジムに通ってムキムキの胸板を作りあげることを想像すればよいでしょう。
実際に te pones tetas という表現があるのかわかりませんが、この一言によってMaría が lesbiana であることを仄めかす結果になるのです。
さて、引用部分は本稿 bollo = bollera = lesbiana の会話の続き(場面は異なります)になるのですが、3人の友人同士の会話です。
-A mí no me mola ninguna del pueblo.
-Bueno… Disculpa, señor urbanista. ¿Qué pasa, que lo rural te corta el rollo? En Madrid, te comerías un mojón.
-Pero así.
-A mí me molan todas.
-Porque estás como el pico de una mesa… Oye, Tirso, ya sabemos quién tiene tus servilleteros, pero yo les pegaría una buena lavada antes de utilizarlos.
-A mí, si me saliese la María…
-¿Qué María? ¿La hija de Elena?
-Claro.
-Vas tú listo con María, chaval.
-Crees que no me la puedo ligar?
-Si te pones tetas. Quiero decir, si te pones cachas, cachas, que a María le molan con pectorales de gimnasio.
-Tío, has dicho tetas.
-¿A María le gusta las …?
-¡Chist! Vale, sí, un poco sí. Se me ha escapado. Se suponía que no podía decir que le había metido la boca a Cloe.
-¿Cloe también es lesbiana?
-Que no. Si es que soy un bocazas. Cloe no es lesbiana, ¿vale? Y lo de María no puede salir de aquí, ¿me oís? ¿Os ha quedado claro, chavales, o lo aclaro más?
-Sí.
-Sí, tranqui, tío.
“Dos Vidas” – Capítulo 32
*más salido que el pico de una mesa 淫らな、エロい
標題の語句の他にも若者らしい物言いが面白いところですが、moler については何度も取り上げたことがありますので関連記事をご覧いただくとして、comerse un mojón は “Cuéntame cómo pasó” でスペイン語815 で取り上げた comerse el marrón を想起させてくれます。同個別記事の2021年7月14日 追記として、
『現代スペイン語慣用成句小辞典』(同学社)では comerse un marrón の見出しで、「不当な責任を負わされる. marrón は mierda (糞) の暗示で、特に若者のあいだでよく使われる表現」と説明されています。
を付け加えたばかりですが、mojón = mierda であることを考慮すると、comerse un mojón が no comerse un mojón 「(欲しいものが)手に入らない、何も手に入れることができない」 の肯定形として使われていることがわかります。
これは ponerse teta という表現が実際にあるのかという疑問と同じように comerse un mojón が標準形として認知されているのかという問題提起になります。ネイティブスピーカーにとっては、問題にもならない疑問なのでしょうが私のようなスペイン語学習者には、こんなところに関心が向いてしまうためにスペイン語の勉強が進まないのだろうなと落ち込んでしまう落し穴になるわけです。
こんなときにこそ、清水憲男先生のお言葉には勇気づけられていますので、この機会に当該箇所をご紹介させていただきますね。
鵜呑みほど非生産的なものはありません。語学学習にあっては丸暗記も必要になるでしょう。けれどももし語学が丸暗記や鵜呑みだけだとしたら、私のように根気のない者には向いていません。今でもまがりなりに続いているのは、まさに言葉の妙味を味わったり、いろいろな言い回しの理由を自分で考えてみたり、辞書に書いてあることを疑ったりしながら、自分で語学そのものを(勝手に!)考え、おもしろくしているからだと思います。「考える語学」を主張するのが現代の風潮に逆行することは承知しています。でも少なくとも私の場合は、逆行することでおもしろさを味わっているのです。
『新・スペイン語 落ち穂ひろい』(白水社) 188㌻
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